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伝心

出来事だったり、お返事だったり
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*2009.11.02 (Mon)... 手紙

つづきより小ネタUP
イチルキ・・のつもり




「一護、すまぬが英語の辞書を貸してはくれぬか」
部屋の扉を開けると、ノックもしない無遠慮な訪問者に一護はノートに向けていた視線を不機嫌そうなものへとかえ、ルキアへとむける。
「お前、課題出てるのに学校に辞書忘れてきたのか?」
「たわけ。そんなわけがないだろう」
「あ?じゃあ自分の辞書使えばいいだろ」
「今手元にないから貴様の辞書を借りにきたのではないか」
「なんでねぇんだよ」
「学校にあるからだ」
「んだよ。やっぱり忘れてきたんじゃねえか」
「違う。重いから持って帰ってこなかったのだ」
「テメェ・・そのくせ俺が持って帰ってきた辞書を使おうってのか?」
「だから初めからそういっているだろう」
わかったら早く辞書を渡せと催促が目に見えるように手を差し出す。
しかし一護は「アホらしい。なんでテメーのためにそこまでしてやんなきゃなんねぇんだよ」と再び机にむかった。
この後、力ずくで辞書を奪おうとするルキアに対し、一護は伸ばされた両腕を拘束し、そのまま部屋の外へと引っ張り出した。そして「甘えたことばっかりいってんな」と、部屋に戻ろうとするルキアの額を軽く小突いて、問答無用で扉を閉める。

だが、この程度のことで諦める朽木ルキアではない。
一度は諦めたと見せかけて、一護が風呂に入る時間に部屋に忍び込み辞書を借りていこうと考えた。
あわよくば、課題の終了した一護のノートも手に入ればまさに完璧だ。

そう思い、一護が浴室に向かったのを確認してルキアは再度一護の部屋へと忍び込む。
しかし黒崎一護という男も馬鹿ではなかった。ルキアの奇襲を予想してか、机の上にも目に届くような場所にもノートはおろか、辞書さえも見当たらない。
「一護のヤツ・・・わざわざ隠していったな・・・」
だからといって此処で諦めるわけには行かない。「器の小さい男だ」と愚痴をこぼしながらルキアは本棚をあさり始める。
「広大な敷地を持つ朽木家の中からたったひとつの物を探し出せと言われたら流石に諦めるところだが、人一人が生活する程度の部屋の中からそう小さくないものを探すのにはそれほど手間もかからぬだろう」
みておれ、一護!と妙な対抗意識を燃やしながら棚の本を一冊ずつ確認する。カバーだけかえて本棚にしまってあるのではと考えたからだ。
しかしその予想も的外れだったのか、カバーから取り出し、ペラペラとページをめくり中身を確認するも、なかなかお目当てのものが見つからない。早く部屋を出て行かなければ一護が戻ってきてしまう。ページをめくるスピードを速めながら作業を進めていくと、手に取った本の中から1枚の紙切れが足元へと舞い降りた。
「何だコレは?」
確かめるように手にとって折りたたまれた紙を開いた瞬間、ルキアはまるで金縛りにあったかのように動きをとめた。
するとほぼ同時のタイミングで部屋の扉が開き、首にタオルを巻いた一護が戻ってきた。
「あっ・・・テメーやっぱり人がいない間に辞書取りにきやがったな。テメーの考えなんてお見通しなんだよ」
「・・・・・」
ひとり勝ち誇ったように喋り続ける一護に対し、ルキアはいまだ言葉を発せられないでいた。そんなルキアに一護も違和感を覚え、「どうした?」とルキアに近寄ろうとするが、まるでそれを拒絶するように突如ルキアが声を発した。。
「・・・何故だ・・」
「あ?」
「何故この手紙が残っている」
そういってルキアが一護に見せた紙切れ。紙に書かれていたのは必要以上に「た」の文字が書きこまれた文章とたぬきの絵。それは自分が尸魂界からの追っ手に死神の力を手にした一護の存在を知られぬよう、自分が黒崎家を出て行ったときに残していった置手紙。
「手紙にも書いてあるだろう!『この手紙は読んだら燃やせ』と!それが何故お前の手元に残っているのだ!」
「・・・・テメーの絵が下手すぎて何書いてあるかわかんなかったんだよ」
「嘘をつくな!」

嘘って言われてもお前の絵が下手すぎるのは真実だろうが・・・一護はそう思ったが口に出すのはやめておく。
どう考えても火に油を注ぐ行為にしか思えないからだ。

「こんなもの残しておいたところで貴様が得することなどひとつもないというのに!!」
こんな手紙を書いたときのことなど思い出したくはなかったとルキアは紙を持つ手に力を込める。こんなもの今すぐこの世から抹消してやろうと手紙を引き裂こうとした時だった・・・
「ばっ!やめろ!!」
「とめるな莫迦者!!」
「うるせぇ!!」
「っ!?」
張り上げられた声に、驚いたルキアの身体が麻痺したように動きをとめる。
「これはもう俺のモンだろうが!テメーにどうこうする権利はねえんだよ!!」
そういってルキアの手から手紙を奪い取る。咄嗟に手紙を抜き取られまいと手に力を入れるも、一護の方が数秒早く行動に出ていたため、ルキアの手から離れていった。
「何故だ!もう必要ないだろう!」
「それを決めるのはお前じゃなくて、俺だろ」
「笑わせるな!そんなものに固執する理由がどこにある!?貴様にとっても良い思い出とはいえぬものではないのか!?」
「あぁ、そうだよ!!自分勝手に出て行ったやつの置手紙に良い思い出なんてあるはずねえだろ!」
「それならそんなもの早く捨ててしまえばいいだろう!」
「・・・捨てられるわけねえだろ」
『何故だ』と問いただしてやりたかったが、その時一護の声があまりに消えてしまいそうな声だったものだから、ルキアは言葉を紡ぐタイミングを失ってしまった。
「・・・たしかに良い思い出なんてねえけど。こんな手紙でもお前が初めて『俺によこした手紙』だろ」
「!?」
「『どうしても捨てられない理由』としては十分じゃねえの」
そういうと一護は再び手紙を折りたたみ、本の間に戻した。
「まぁ、お前にとっては見せられてあんまり気分のいいもんじゃねえよな」
『だからお詫びに辞書貸してやる』というように、一護はどこから出してきたのか、ルキアに英語の辞書を差し出した。
しかしルキアは辞書を受け取らず、キッと一護を睨みつける。
「やはりあの手紙、今すぐ処分しろ!」
「・・だから、何度も同じこといわせんなよ」
「五月蝿い!!あんなもの・・・『初めての手紙』などと大事にされても嬉しくない!貴様に送るはじめての手紙があのような・・・・」
「ルキア・・」
「あんな手紙を数に入れるのはやめてくれ!」
あの手紙には負の感情しかつまっていない。一文字一文字に込められた思いは『悲しさ』『寂しさ』『苦しみ』ばかり。そんなもの持っていたところで縁起の良いもののはずがない。
「不幸の手紙といっても過言ではないのだぞ」
スカートの裾を握り締め、俯くルキアの額に一護はポンッと軽く辞書を押し付ける。
「・・・・不幸の手紙なんかじゃねえよ」
「・・・・」
「お前が俺らのこと心配して残した手紙だろ?だから・・つまり・・・こもってんだろう?その『アイジョー』ってやつが」
「・・・・・」
「だから、捨てる必要なんかねえんだよ」
「・・・・貴様は本当に」

『莫迦者だな』という言葉は口に出来なかった。
胸の奥から溢れてくる暖かな感情に、全てかき消されてしまったのだ。

一護に言われて初めて気付いた。
確かに私はあの手紙にこめていた。

『一護が無事であるように』と・・・

それが愛情だと一護は言った。


今すぐにでも破り捨ててしまいたかったはずの手紙が少しだけいとおしく思えた。


END

中途半端ですんません。
小ネタのくせに無駄に長いな。

一護ならきっと手紙捨ててないんじゃないかなっと思って書いたネタ。
絵日記の方で箱の蓋開けてるルキアの絵(のつもり)がおいてありますが、本当は箱の中にでも隠しておいたって感じにしようと思ったんだけど、途中で却下したため、絵だけ微妙に残ったという可哀想なオチ。
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