伝心
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つづきより一護と水色の小ネタ
「一護はさ、朽木さんに告白しないの?」
文化祭の片付けの途中、実行委員の有沢さんの目を盗んで体育館裏で休憩をする僕は共犯者である一護が問いかける。
「何で俺がアイツに告白するんだよ」
「だって好きなんでしょう?」
「俺、アイツが好きだなんて一言でもいったか?」
「じゃあ嫌いなの?」
一護が嫌いな人間をそばに置くわけがないとわかっていて質問している。
わかったつもりでいても、言葉にしないと気付けないこともあると思うから
だから僕はいつもまるで質問するように、答えを引き出させるように、相手に話しかける。
「嫌いじゃねえよ」
「じゃあ好きなんだ」
「・・・・だから人としては好きって言うか・・・そういうの恋愛感情とは別だろ?」
知ってるよ。
でも君のはどう考えてもそれとは違う。
ねぇ、いつまで君は気付かないフリを続けるつもり?
一護がそのつもりなら僕にも考えがある。
「ふ~ん。じゃあ僕が朽木さん貰ってもいい?」
一瞬小さく身体を飛び上がらせて、その後で平静さを装いながら足元にあった空き缶を拾い上げる。
「却下。お前はいい奴だけど色恋沙汰となると別だ。お前にアイツはまかせらんねえよ」
そういって放り投げた小石は大きく弧を描いて自販機横のゴミ箱におさまった。
「それなら一護は誰になら朽木さんを任せていいって思うの?」
「誰って・・・」
「啓吾?石田君?チャド?それともあの朽木さんの幼馴染の阿散井って人?」
「それは・・・」
「本当は誰が相手でも許せないんでしょう?自分以外は」
いい加減に気付きなよ。
「別にそんなんじゃねえよ!それに俺がルキアの側にいるのはあいつがまだ現世のことよくわかってねぇから・・・」
「『だから俺がついていてあげないと』って?そうやってこのままずっと『保護者』続けるつもりなの?」
「仕方ねえだろ。あいつ他に頼れるやついねえし」
「そうかな。友達も結構増えたみたいだし、それにこの世界の事を教えてあげるだけなら相手が一護じゃなくてもいいんじゃない?
それこそ朽木さんに恋人ができればその人が教えてあげればいいわけだし、側にいてあげればいいんだからさ」
「・・・・・」
「一護って頭はいいのにバカだよね」
「どっちだよ、それ」
「わかってるんでしょ?一護は頭がいいから」
「お前言ってること矛盾してるぞ」
「その矛盾を生んでるのは他でもない一護でしょう」
君たちは只でさえ問題が山積み何だからこんなところで踏みとどまっている場合じゃないんだよ。
当たり前みたいに隣にいた人が、明日も隣にいる保証なんでどこにもないんだからさ。
「誰にも渡すつもりないなら保護者なんてやめちゃえばいいのに」
「・・・簡単にいうなよ」
「僕は一護のこと結構好きだからできれば幸せになってもらいたいんだ」
「その割りにお前手厳しいことばっかり言ってくるよな」
「だって君たち見てるとイライラしてくるんだもん。仕方ないよ」
「笑って言うなよ」
「羨ましいよ、本当に」
僕にはないものたくさん持っている君たちが・・・
「そういえば5組の田所君が後夜祭のダンスに朽木さんを誘うって言ってたよ」
「・・・・」
「どうするの?『保護者さん』」
「・・・・」
「田所君は生徒会もやって真面目な人だし、それでいてオカルト研究会にも入ってるから朽木さんのことも受け入れられると思うけど?」
「お前、俺にどうしてほしいんだ?」
「いったでしょう。一護には幸せになってほしいって」
【現実】とかそういったもの全てを飛び越えて、不可能なんてこと無いとまではいえなくても
努力次第では変えられるものもあるってことを教えてほしいんだ。君たちに。
そうすれば、僕ももうちょっとこのつまらない世界を信じてみることが出来そうだから。
「お前が望む結果になる保証は何処にもねえんだぞ」
「わかってるよ」
わかってる。
僕の望みは叶うって。
「頑張ってね、一護」
目に見えない神様なんて信じてないし、星が願いなんて叶えてくれる訳ない。
だから目に見える君たちに願うよ。
幸せになってください。
僕の世界に希望をください。
FIN