伝心
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つづきに小ネタ投下
「君は黒崎を見るとき、まるで太陽を見上げるような目でみるんだね」
背後から響いた声に振り返れば、そこには声の主である見た目どおり中身も真面目で堅苦しい男が一人立っていた。
「貴様が井上を見る時と同じ目と言うことか?」
そういって小さく笑うと再び窓の外に視線を向ける。
校門に向って歩いていく生徒の波の中にひときわ目立つ色が2色。
眩しいほどのオレンジ色と目を奪われる長くて美しい栗色。
「今日は一緒に帰らなかったのかい?」
「あぁ、用事があるから先に帰っていてくれと言ったのだ」
石田は私の質問に答えることはせず、窓際の自分の席で帰り支度を始める。
「珍しいね。君に用事がある場合大抵その用事に黒埼も含まれると思っていたよ」
「貴様の言うとおりだ。だから本当は用事なんてない」
わかっていて言っているだろう?と窓ガラスに背を預けた。
「時々な、一護が眩しすぎてたまらなくなる時があるんだ…そんな時一護の側にいると考えたくも無いことばかりが頭をよぎる」
【このまま側に居ていいのか】【私の存在がこの輝きを曇らせるのではないか】【一護にはもっと相応しい人間がいるのではないか】
「そんな私が側にいれば一護は私を心配する。そしてどうすることも出来ないと気付くと自分を責めるだろう。一護を困らせたいわけではないのだがこればかりは私にもどうしようもない」
それが一護の優しさであり、良い部分であると分かっていても正面から向き合いたくない時もある。
「貴様も同じだろう?自分の中に確かにある感情に気付きながら井上にそれを告げないのは井上を困らせたくないから。自分に向けられる井上の笑顔を失いたくないから。違うか?」
「何を言っているのか意味がよく分からないな」
「防衛本能が強すぎるのも困り者だな」
石田が帰り支度を終えたところで、教室の扉が開くと同時に新たな参入者の声が届いた。
「僕たちは似たもの同士だからね」
「小島…立ち聞きとは趣味が悪いな」
「そう、僕って顔に似合わず結構性格悪いんだよね」
「自覚があるだけまだマシだな」
小島は私の前まで歩いてくると、窓の下を覗き込む。
つられて私も窓の外に目を向けるとそこには一護と井上を追いかける浅野の姿があった。
「自分の気持ちに正直で、いつだって前を見ている彼らが眩しくて、羨ましくてたまらない。僕たちにはないものを彼らはたくさん持っている。1日の大半を同じ場所で過ごして、同じようなものを見ているはずなのにどうしてこんなにも違うんだろうね」
「きっと【見方が違う】のではないか?」
ルキアの言葉に続くように石田が小島に言った。
「根本的に考え方が違いすぎるんだ。だから同じものを見ても捉え方が違えば感じるものも違ってくる。きっと僕らは彼らとは同じものを【見る】ことはできないよ」
「でもずっと側にいれば【どう感じたか】を教えてもらうことはできるよ。そうすれば少しは見方も変わるんじゃないかな?」
月みたいな僕らが輝く方法は太陽の光に手を貸してもらうしかないんだから…
「考え方が違う人間とわざわざ一緒にいようと思うとは物好きなやつだな」
「互いに刺激しあう方が成長できることもあるからね」
「こんなにも捻くれた考え方しか出来ない3人と一緒にいるよりはずっといいかもな」
私達はそれぞれの荷物を手に、ともに教室を後にした。
FIN
ルキア・石田・水色は同じタイプで、一護・織姫・啓吾が同じタイプ。いうならば月グループと太陽グループ。違うもの同士だからこそ一緒にいてバランスがとれるんじゃない?って話。